八方塞がりの私の日常をその場しのぎで書き溜めております。

‪匿名大喜利を常に募集だけしておきます。‬ ‪気が向いたらブログで紹介します。

匿名大喜利| Peing -質問箱-

 

【今週一冊コレ読もう!】神ポジションが止まらない 塔と重力/上田岳弘

なんとなくで続けております毎週日曜の【今週一冊コレ読もう】ではございますが、

今回は平成最後の芥川賞作家、上田岳弘の「塔と重力」です。

 

 

 

 

概要

f:id:umd111:20190519195855j:image

タイトル:塔と重力

著者:上田 岳弘

発売日:2017/07/31

ページ:205p

 

あらすじ

予備校仲間と勉強合宿のさなか、阪神大震災で初恋の相手とともに、倒壊したホテルに生き埋めとなった僕は、ひとり生還したのち、失われた彼女の記憶を抱えて生きていた。20年後、Facebookを通じて再会した大学の旧友は、そんな僕に、「今日は美希子を呼んでいるんだ」と持ちかけた。表題作と響きあう2つの短篇併録。

 

3つのおすすめ

①超難解な登場人物達

②身勝手な男の汚さがひく

③神ポジションが止まらない

 

①超難解な登場人物達 

まずはじめにちょっとだけ作者と本の概要紹介ですけども、「ニムロッド」という作品で平成最後の2018年下期の芥川賞を受賞された、兵庫県明石市出身の作家さんでございます。この作品は芥川賞ではありませんが、文化庁が主催する新生面を開いた芸術家に送られる芸術選奨新人賞という賞を受賞した作品となります。

 

そしてこの塔と重力の本の中には、三編の話が入っています。

表題作の「塔と重力」に加えて、「重力のない世界」「双塔」という二編が入っています。

今回の紹介では基本的には「塔と重力」に対してのおすすめとなりますが、残りの二編は塔と重力の考え方や思想的な部分が濃い作品ですので、だいたい同じだと思ってもらっても構いません。ただ書いているのは「塔と重力」に対してということでお願いします。

 

というところで中身でございますが、読み進めて思ったことを率直にいうと、とにかく登場人物が難解な人ばかりなんですよ。

 

かっこよく言えば文学的なキャラクターなんでしょう。

浮世離れしたと言えばいいのかわかりませんが、言葉の言い回しにしても考え方にしても行動にしても、一般人の人知を超えた行動を取り続けます。

 

この話は、主人公が高校の時に付き合っていた彼女を震災で亡くしていてそれが話のキーになっていますが、あらすじにも書いてある様に、友達は「今日美希子を呼んでいるんだ」なんていないはずの女の子を呼ぶ飲み会を開いてきたり、セフレの女の子は「世の中が面倒だ」とFacebookのアカウントを主人公にあげちゃったり、馬鹿の表現をすると、意味がわからん人たちの話なんです。

 

ただそれで何が面白いかって、

この登場人物達各々の思想の部分なんですよね。

 

純文学に対して、ネタバレってどういうことを言うのかわかりませんので、あえて細かいことは書きませんが、その思想が共感できるってのとはちょっと違う不思議な感覚なんですよ。

 

もちろん共感や気づきっていうような、ありふれた思想に対する感想を持つ部分もあるんですが、読むと分かっていただけると思います。

もっと崇高で、難しくて、読んだ自分も本当に全てを理解しきれたかわからないようなものなんです。

 

でもそれがとても気持ちがいいんですよ。

 

今まで見たことのない世界を見れると言うと綺麗すぎる気もしますが、未知との遭遇を思想の面で感じられる作品だと思います。

 

 

②ひく程の男の汚さ

終盤まで来ると少し見え方が変わってくる部分は正直ありましたが、初めから中盤にかけての展開に対して思ったことは男の汚い部分がとても出ているなぁってことでした。

 

一貫してこの小説は情景描写が極端に少なくて、感情の機微とその時の見え方で話が進んでいくんですけど、とりわけ性交渉の描写がかなり登場します。

それも行動も事細かに、感情も生々しく、性を忠実に表現しきっています。

 

性を性として貪る主人公の姿に、友人が美希子の存在を持ち出し心をかき乱していきます。

 

その姿は、時に情けなく哀れで身を捩りたくなる様な気持ちにさせることもありますが、それがまた描写に深みを持たせ、思想に層が積み重なり、とても面白いものに変わっていきます。

 

皆さんはこの身勝手な男の姿をみて引くものなんでしょうか。

それとも惹く程愛おしく感じるでしょうか。

 

③神ポジションが止まらない

話の中で「神ポジション」と言う考え方が頻繁に登場します。

 

②のおすすめポイントの中では、男女関係といった部分を取り上げてきましたが、この本の思想はその枠だけではなく、主義主張や概念的な部分にまで入り込んでいきます。

 

その時に現れるのが、「神ポジション」です。

これは主人公の友人が、すぐに「世界」とか「人類」みたいな仰々しい言葉を使うことから始まった一種のイジリの様なものらしいんですが、この神ポジションがミクロをマクロに変えてしまうのが僕の中ではものすごく新鮮だったんですよ。

 

要は、小さい悩みの視野を広げるわけです。

「嫌いな給食残したい」ってのを「世界には食べ物がなくて苦しんでいる人がいる」ってので説き伏せる、あれだってミクロをマクロに変換してるって言ってもいいでしょう。

 

ただこの例えっていうのは、使い古されて加えて的を射た内容でないから、胸に響かないんです。

理屈はわかるけど、だから何ってなってしまうんだと思うんですね。

 

この小説の神ポジションの考え方と発想の飛ばし方は、とにかく難解で正直わからず分かったふりをしてる部分も僕自身大いにあると思います。

 

ただ言ってしまえば150Pぽっちの文章を読み進めているうちに、だんだん自分の中にも神ポジションが生まれてくるんですよ。

神の目線で考えている、仰々しく物事を捉える、上から俯瞰する、そんなんじゃないんですよね。

 

なんというか、彼らの言葉が理解できてくるんですよ。

 

もっと頭のいい人が読めば、初めからバッチリ考え方を理解できて、神ポジションもすぐに吸収できて、すっと頭に入ってくるものなのかもしれません。

ただ、僕の場合は10P読むんにこんな時間かかるか、っていうほど必死になって文章を呼んでやっと理解できるかできないかみたいな読み方しかできませんでした。

なのに神ポジションが入ってくるんですよ。

 

「面白い」だけで表現してしまいたくないこの独特の感覚を、

ぜひ小説で読んでみてほしいなぁと思います。

 

まとめ

と色々書いてきましたが、

この小説はとにかく読みにくい。

まぁ難しいし、難解ですよ。

 

はじめは「好きって言ってる自分が好き」っていうための、

小説界のラーメンズ的な立ち位置の本なのかなと思ったくらいです。

 

加えて読み終わりましたが、この感想を人と共感するのも怖いんですよ。

とにかく僕の中で難しい本やからさ、「この描写の隠喩が深い!」っていう感想が、あってるのか間違ってるのかすらわからんし、もっと言えば根幹の思想の部分の理解があってるかどうかすら自信がないんですよ。

 

それでも紹介しようと思ったのが、最後のおすすめポイントにあげた、神ポジションの伝染を感じてしまったからなんですよね。

 

もはや意図通りの理解ができているかなんてどうでもええんやないか?と。

本を読んで気持ちを動かされたなら、それはいい小説でええんやないか?と。

 

この小説はそりゃ芥川賞取れる名作や!と言えるほど理解なんてできていません。

ただひたすらに、僕が読んでみて、気持ちをうごかされた作品ではありました。

 

僕ごときでこうなんです。

僕ごときが気持ちを動かされるんです。

加えてこの作者、芥川賞を取る様な作家さんです。

 

一読の理由としては十分ではございませんか?